薬物乱用防止

薬物乱用について

(1)薬物乱用とは

 薬物乱用とは、決められたルールから逸脱して薬物を使用することを指します。

 覚せい剤、麻薬、大麻などの違法薬物は、一回の使用でも『乱用』となります。

 また、法律によって認可された薬は、病気やけがを治す、または悪化を防ぐことを目的としていて、その取扱いや使用目的・方法には、明確なルールが定められています。
 これらの認可された薬も、定められた目的や使用方法以外で使用すれば『乱用』となります。

 薬本来の役割は、「咳やくしゃみを止めるために、風邪薬を飲む」というように、「つらい状態を、元のつらくない状態に戻すこと」です。
 一方、乱用される薬物の場合は、「気分がよくなる、嫌なことを忘れられる」などを強調するが、「一時的であっても、元の状態よりよくすること」は、薬本来の役割から逸脱しているため、『問題がある薬物』となります。

(2)薬物乱用の具体例

法律上のルール違反

 規制されている薬物の使用、規制されている薬物の譲渡

目的や使用方法のルール違反

 用量・用法を守らないで、風邪薬を飲む
 不眠症でないのに、めいてい感を味わうために睡眠薬を飲む
 塗料を薄めるためのシンナーで、シンナー遊びをする

社会の常識や約束事のルール違反

 処方薬をためておいて、一度に多量使用する

(3)乱用される薬物の種類

覚せい剤【覚せい剤取締法によって規制されています】

 中枢神経が興奮し、気分が高揚して、疲労が取れたように感じますが、薬が切れるとその反動で強い疲労感やけんたい感、脱力感が襲ってきます。繰り返し使用していると中枢神経に異常をきたし、幻覚や妄想を伴う覚せい剤精神病になります。大量に摂取すると死亡してしまうこともあります。
 スピード、エス、シャブなど別の呼び名があります

シンナー等有機溶剤【毒物劇物取締法によって規制されています】

 急激なめいてい状態となり大量に摂取すると、呼吸困難に陥り死亡してしまうこともあります。情緒不安定、無気力となり、幻覚や妄想を伴う有機溶剤精神病になります。
 アンパン、ジュントロなど別の呼び名があります

大麻(マリファナ)【大麻取締法によって規制されています】

 感覚が異常になり、幻覚や妄想が現れます。乱用を続けると無気力になり大麻精神病になります。生殖機能の低下、月経異常を引き起こすとの報告もあります。
 チョコ、ハッパ、ハッシシュなど別の呼び名があります。

MDMA【麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています】

 覚せい剤とほとんど同じ作用とLSDのような幻覚作用があります。急性中毒で死亡してしまうこともあります。
 エクスタシー、エックス、バツなど別の呼び名があります。

コカイン【麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています】

 覚せい剤とほとんど同じ作用を示しますが、効果が迅速で強烈です。大量に摂取すると、けいれん発作が繰り返し起こり死亡してしまうこともあります。幻覚や妄想を伴うコカイン精神病になります。

ヘロイン【麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています】

 落ち着いたような気分を味わいますが、薬がきれると嘔吐(おうと)、けいれんなどの激しい退薬症状(離脱症状)に襲われます。大量に摂取すると、呼吸困難に陥り死亡してしまうこともあります。

LSD【麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています】

 幻覚が現れます。色彩感覚がマヒし、空間が歪んだような感覚に襲われます。転落などの事故死の原因になります。

マジックマッシュルーム【麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています】

 サイロシン、サイロシビンなどの幻覚を引き起こす麻薬が成分として含まれており、LSDと似た作用を示します。麻薬原料植物として規制されています。

(4)危険ドラッグとは

 危険ドラッグとは、法律で規制されている薬物の化学構成を一部改変したもので、脱法ドラッグ、合法ハーブなど呼ばれることもあって、脳や身体に対する害が弱いように誤解されることが多いですが、覚せい剤や麻薬よりもはるかに危険な可能性のある薬物です。

 覚せい剤や麻薬の化学構造を少しだけ変えた物質は、「どこで」、「誰が」、「何を使って」作っているかわからず、より危険な成分が含まれている場合があります。

 また、「お香」「バスソルト」「ハーブ」「アロマ」など、一見しただけでは人体摂取用と思われないよう目的を偽装して販売され、色や形状も様々で、粉末・液体・乾燥植物など、見た目ではわからないように巧妙に作られています。

 それら危険ドラッグを、繁華街にある店や自動販売機、インターネットなどで購入して、吸ったりのんだりしたことで、嘔吐(おうと)、けいれん、呼吸困難、意識障害、異常興奮、錯乱などを起こして救急搬送されたり、死亡したりする事件が起きています。

 さらに、使った本人が苦しむだけでなく、幻覚や興奮のために他人に暴力をふるったり、車を運転して暴走し、ひき逃げや死亡事故などの重大な犯罪を引き起した事例もあります。

(5)危険ドラッグの法規制について

 平成26年4月1日に薬事法が改正され、指定薬物に指定された危険ドラッグは、使用のみならず、持っているだけでも罰せられることになりました。指定薬物とは、幻覚、興奮をもたらすおそれがある物質を薬事法に基づき厚生労働大臣が指定した薬物。

 さらに、平成26年12月からは医薬品医療機器等法(薬事法から名称変更)の改正により、新たな危険ドラッグが発見された場合、その製品だけでなく、それと同様の製品についても、指定薬物の指定を待たずに製造・販売などを禁止することができるようになり、製品の写真をホームページに載せたりして宣伝していれば、販売していなくても違反となりました。
 このほかにも、密輸入防止に向けた水際対策、国際的な連携・協力の推進など、危険ドラッグの根絶に向けた取り組みが進められています。

薬物乱用で破壊された脳は簡単には元に戻らず、命を失うこともあります

(1)脳や身体そのものの変化

 薬物を乱用すると、脳の回路や細胞が破壊、または改変されてしまい、身体にも問題が起こります。一度、ダメージを受けた脳は、元の状態には戻らず、場合によっては回復できない機能障害もあります。
 また、薬物の薬理作用によって、現実と記憶の中にある情報の区別がつかなくなり、見えないものが見える(幻覚)、聞こえないことが聞こえる(幻聴)、ありもしないことを信じ込む(妄想)という精神病症状が現れることもあります。

 例えば、「自分の腕の皮ふの下に虫がはっている」という幻覚は、ダメージを受けてしまった脳が情報を組み立てるときに、自分の手の視覚的情報と、過去の虫の記憶の情報を混同してしまい、実際にはいない虫がはっきりと見えているのです。

身体への影響

 身体を思うように動かせない ⇒ けがが増える、事故を起こす
 生命維持機能の低下 ⇒ けいれん、呼吸困難を起こす

【死に至ることもある】

心への影響

 現実と空想の判断がつかなくなる ⇒ 妄想を抱く、幻覚が見える
 感情のコントロールがつかなくなる ⇒ 薬物がないと不安

【薬物をやめたくてもやめられない】

(2)耐性と依存とは

 「耐性」とは、薬物を繰り返し使用することで、最初は効果があった薬物でも、同じ効果を得るために使用量を増加しなくてはならなくなる現象で、接種量や回数がどんどん増えていくという悪循環に陥ることになります。
 そうするとさらに薬物への欲求が高まり、使用量が増え、脳や身体へのダメージもより深刻になっていきます。

 そして、乱用される薬物はいずれも脳の快楽神経を強く刺激するため、簡単に快感が得られる薬物乱用におぼれ、脳は、薬物がなければ楽しめない、喜べないよう変わってしまいます。
 さらには、効果が切れることによって起こるひどい不快感や苦痛から逃れるために乱用を繰り返し、やめようと思ってもやめられない、薬物に対するコントロールを失う「依存」状態に陥ります。

 薬物乱用の怖さは、「耐性」と「依存」による悪循環の形成にあり、依存からの回復は生涯の課題となります。

(3)フラッシュバックとは

 薬物乱用により脳が一度変化してしまうと、薬物乱用をやめて症状が治まった後でも、ストレスや睡眠不足、飲酒などが引き金となり、薬物を使っていなくても、突然、以前の精神病症状が出現することがあります。
 これを「フラッシュバック」現象といい、時期もタイミングも予想不可能であり、適正な治療を受けたとしても元のように回復するのは難しく、完全に依存から抜け出すことはせきません。

薬物乱用は、本人だけでなく、周りの大切な家族や友人を傷つけます

(1)乱用者本人への影響

 乱用者は依存状態に陥ると生活の優先順位が大きく変わり、家族や自分の健康、将来の夢よりも薬物を優先するようになります。

 脳は、20歳頃まで成長すると言われており、特に10代の時期は身体も心も急速に発達し、家族や学校生活などをとおしてたくさんの知識を得ます。それと同時に、人間関係、論理感や道徳観、感情のコントロールなど多くのことを学びます。自分らしさに気づき、育む時期です。
 しかし、この時期に薬物を乱用すると、身体は大きくなっても心の成長が止まって感情のコントロールができず、他者とのコミュニケーションがうまくできないなどの問題が起こります。
 その結果、自己嫌悪や自尊感情が崩れて孤立しがちになる。また、これまで楽しいと感じていた部活や趣味に対しても興味が持てなくなり、生活習慣が変化してしまう場合や、幻覚や妄想が出現することもあり、さまざまなトラブルを起こしてしまいます。

(2)家族や友人への影響

 乱用者には、薬物の被害は自分だけで、周りには迷惑をかけていないと考える人が少なくありません。
 しかし、乱用者本人が変化することで家族や友人も大きな被害を受けてしまいます。

 例えば、薬物を買うためのお金が足りなくなって、家族のお金を持ち出す、感情をコントロールできずに生活が乱れて、いざこざや家庭内暴力などが絶えない状況になり、それを隠すために家族が近所づきあいや社会との関わりを避けるようになることもあります。
 また、友人関係においても些細なことで言い争いになる、金銭の貸し借りのトラブルが絶えないなど信頼関係が崩れ、つきあいが終わってしまうことも多いです。

(3)社会への影響

 薬物を乱用するためには当然お金が必要で、最初か家族観や友人間でちょっとした金銭のごまかしから、次第にエスカレートしていき、さまざまな犯罪が誘発されます。

  • 薬物を買うお金を得るために詐欺、恐喝、窃盗、空き巣、援助交際、売春
  • 自分が持っている薬物を一部の人に高く売って利益を得る密売

 また、薬物の乱用により正常な判断ができなくなる、運動機能がおかしくなる、幻覚や妄想に襲われるなどの障害が起き、数多くの事件・事故が引き起こされています。

  • 薬物を使用し続けて混乱し、知人に殺されると思い込み、知人を刺した
  • 薬物を使用して車を運転し、誰かに追われている妄想に取りつかれ、歩行者をはねた

 そして、社会経済的な損失として、生産性の低下、労働力の減少、犯罪被害の拡大、中毒・依存症者の治療費の増大、犯罪組織の資金源となり、健全な社会を阻害するなどが挙げられます。
 薬物乱用は、本人だけの問題ではありません。周りの人に危害を与え、社会全体の問題となっています。

誘いははっきりと断り、自分の大切な身体、将来を守りましょう

(1)身近にある危険を察知する判断力

 薬物乱用は、自分には関係ない、身近な問題ではないと思われがちです。しかし、山梨県内においても、高校生が危険ドラッグをネットで入手し、所持していた事件がありました。インターネットや携帯電話等の普及によって、薬物は手軽に手に入れることができる状況にあり、自分に関わりのある、身近な問題となっています。

誘いの言葉にだまされない

 一度だけなら大丈夫 ⇒ ダメージを受けた脳は、元には戻らない
 いつでもやめられる ⇒ 依存により、自分の意志でやめることはできない
 やせられる、いやなことを忘れられる ⇒ 脳や身体が変化し、悪影響が現れている
 預けるだけ、お金はこの次でいい ⇒ 所持するだけで、犯罪となる

 また、薬物乱用は、友だちや先輩から誘われて、面白そうだという好奇心や仲間はずれになりたくないからなどのきっかけからも始まります。知人からの誘いを断るのは簡単なことではなく、「断ることが正しい」ということは知っていても、それが難しい場合もあることを理解しておいてください。
 ただし、相手は薬物を使う仲間を増やして自分の罪悪感や劣等感を消したい、あるいは金もうけのための誘いです。きっぱりと断りましょう。

(2)はっきり、きっぱり断ることの重要性

 あいまいな断り方では、強く誘えば断れないと相手に思わせてしまうので、「はっきり、きっぱり」が断るときのポイントです。
 また、断った後はできるだけ早くその場を立ち去ることも重要です。長くその場にいると自分の決心が鈍りやすく、断り続けることが難しくなってしまいます。
 何より、自分自身の好奇心という誘いを断るためには、薬物乱用についての知識や危険性を知ることが大切です。薬物依存に苦しんでいる人は、断らなかった自分の選択を後悔しています。

(3)誘いを断った自分に、自信を持とう

 生きづらさを感じたときも薬物ではない選択をできるよう、自分自身の大切さに気づき、よい面も欠点も含めて自分を受け入れる気持ちを持つことが重要です。
 自分を勇気づければ、誘いを断った後の不安も解消できます。誘いを断った自分に、自信を持ちましょう。

自分を勇気づけるために、考えることが大切

  1. 自分が大切に思うもの
  2. 自分を本当に大切に思ってくれている人
  3. 自分が得意なこと
  4. 自分の将来の夢や目標
  5. 薬物についての正しい知識

悩んだときは、まず相談を

 薬物乱用に関わる問題で困ったときは、ひとりで悩まずに相談しましょう。友人や家族など身近な人に相談しづらいとき、または相談を持ちかけられて困ったときは、安心して相談できる窓口があります。
 相談窓口では、相談に関する秘密は厳守します。安心して、少しでも早く相談してください。

  • 友だちが使っているけどどうしよう
  • 薬物の誘いを断る自信がない
  • 薬物を使ってしまった。どうしよう
  • 子どもから、薬物について相談された

薬物乱用についての相談窓口

 山梨県衛生薬務課 055-223-1491
 山梨県精神保健福祉センター 055-254-8644
 山梨県中北保健福祉事業所(中北保健所) 衛生課 0551-23-3071
 薬物110番 055-228-8974
 山梨県警察本部 ヤングテレホン 055-235-4444
 (青少年の悩み事などの相談を受け付けています。子供のことで悩んでいる保護者も相談できます)

薬物乱用に関する情報(厚生労働省)

 薬物乱用に関する情報について、さらに詳しく厚生労働省ホームページをご覧ください。

薬物乱用防止のイラスト。オレンジ色のダイヤル式電話の形で描かれており、ダイヤルの中心にあたる部分にCALL NOWの文字がある。
この記事に関するお問い合わせ先

健康増進課 健康増進担当
〒409-3892 中央市臼井阿原301番地1
電話:055-274-8542
ファックス:055-274-1125

メールでのお問い合わせはこちら